医師・看護師・患者・リハビリテーション師のイラスト機能回復を最大限に図り、可能な限り自立した生活を送る能力を取り戻すことは、高齢者リハビリテーションにおける城内病院の理念です。

高齢者のリハビリテーションは、病状・症状を細かに観察し、患者様それぞれの治癒過程に添って丁寧なリハビリを行うことが大切です。

患者様が、あなたらしく、豊かな生活を送ることができるようにを心がけて、城内病院は高齢者のリハビリテーションに取り組んでいます。

要介護にならないために重要な予防的リハビリテーションとは?

私たち、とくに高齢者は体を動かさない状態が続くと、「手足の筋肉が衰える」「関節が硬くなる」「体力が落ちる」など、すぐに機能が低下します。
疾患や障害が発生する前から適切なリハビリを行うことで発生そのものを予防し、障害が起きたとしてもその程度を最小限に留めます。
要介護状態にならないために、予防的リハビリテーションは重要な役割を果たします。

高齢者の急性期リハビリテーション

急性期には、疾患の治療とともに二次障害や合併症を予防するためのリハビリテーションを行います。安全に動作を行えるように周辺環境に配慮いたうえで、入院直後、術前や術直後から廃用予防のリハビリにも努めます。

廃用とは「身体の不活動状態により生ずる二次的障害」として体系化された概念。不動、低運動や臥床(がしょう:床に就いていること)によっておこる全身の機能低下などを指します。

手術直後や受傷直後は病室(ベッドサイドリハ)にて、二次障害や廃用症候群(寝たきり状態でいることによって起こる症状が多い)予防など、身体状態に応じて無理のない範囲で以下の訓練を実施します。

急性期リハビリテーションの訓練について

関節可動域訓練

  • 術側の訓練は痛みが強くならないように愛護的に行う。
  • 関節置換術などの手術後は脱臼肢位を考慮に入れる。

筋力増強訓練

  • 術側の訓練は深部静脈血栓症や筋力低下予防などを考慮する。
  • 非術側の訓練は筋力向上を目的とする。

起居動作訓練:寝返り/起き上がり/ベッド上の移動/座位訓練/立ち上がり訓練/ベッドから車椅子への移乗動作訓練/歩行訓練

  • 手術直後や受傷直後はベッド上で安静となっている場合が多く、膀胱留置カテーテル(膀胱から直接導尿させるためのもの)を挿入している。長期間留置することで尿意などの感覚がわかりづらくなる。できるだけ早期にカテーテルを抜去することが重要。
  • 乗り移り動作がスムーズな状態になるとカテーテルを抜去する。排尿・排便時にポータブルトイレや車椅子に移乗して、多目的トイレへ行くことが可能になる。

ベッドから車椅子への移乗訓練 / 車椅子からの歩行訓練

ベッドから車椅子への移乗訓練のチェック項目

1~4のチェック項目をクリアした後に歩行訓練へと移行していきます。
頭がふらつく感じや吐き気などの症状があるか、よく観察し状態に応じて進めます。

  1. ベッドの背もたれを起こして、どれだけベッド上座位を保持できるか。
  2. ベッドの端に座り、足をおろしてどれだけ保持できるか。
  3. 車椅子に移る際、免荷(下肢を手術した場合は主治医の許可が下りるまでは地面に触れないように、乗り移りや歩行を行うこと)などを守ることができ、かつスムーズにできるか。
  4. どれぐらいの時間、車椅子に座ることができるのか。

歩行訓練(平行棒内)に移行へのチェック項目

車椅子に移乗できるようになると歩行訓練を行います。注意することは、ベッド上での臥床時間が長いと筋力低下や足底の感覚が鈍くなることです。
起立時・歩行時などにふらつきがあるかよく観察し、状態に応じてリハビリを進めます。

  1. 立ち上がりの際、足が浮いている感じやふらつき、膝が折れる感じはないか。
  2. 歩行時や方向転換時などに、ふらつきはないか。
  3. 免荷の場合、非術側のみでの立ち上がりや歩行は可能か。  術側は医師の指示により、免荷(下肢を手術した場合は、主治医の許可が下りるまでは地面に触れないように、乗り移りや歩行を行うこと)になっていることも多くあります。

高齢者の回復期リハビリテーション

回復期には、急性期リハビリテーションから継続して集中的な機能回復のための訓練を行います。理学療法士や作業療法士が、個々の疾患や状態に合わせた訓練を行い、最大限の機能回復を図ります。

回復期リハビリテーションは、手術後や受傷後からある程度の期間が経過し身体状態が安定しているため、在宅復帰に向けて日常生活動作の改善を目的とします。

理学療法士と作業療法士が連携して集中的にリハビリを行い、在宅復帰に繋げていきます。
リハビリ室での個別訓練だけでなく、「ベッド上ではなく、食堂で食事をする」「実際のトイレで排泄を行う」などの病棟生活でも行う日常生活動作でも、能力向上を目指します。

回復期リハビリテーションの訓練について

関節可動域訓練

  • 痛みなどの状態に応じて可動域を拡大することで、関節可動域制限により行えなかった動作を獲得する。

筋力増強訓練

  • 歩行や起居動作などにおいて、筋委縮や筋力低下により代償動作がみられる場合があるため、術側と非術側ともに積極的に筋力・持久力向上を図る。

起居動作訓練:寝返り/起き上がり/ベッド上の移動/座位訓練/立ち上がり訓練/ベッドから車椅子への移乗動作訓練/歩行訓練
  • 立位・歩行訓練を積極的に行うことで、筋力、協調性や基本的体力の改善を図ることができ、安定した動作能力(起居動作・歩行動作)の獲得を目指す。

平行棒内歩行から四輪歩行器へ / 四輪歩行器から独歩へ

平行棒内から四輪(四脚)歩行器に移行する場合

身体状態に応じて歩行量を増やします。その際、痛みやふらつきなどがほとんどなければ四輪(四脚)歩行器を施行します。
安定している場合には、歩行器にて病院生活を過ごしていただきます。

四輪歩行器から杖または独歩に移行する場合

身体状態が安定し、歩行量が増え代償動作が軽減している場合、杖や独歩などの練習をします。
杖や独歩などで歩行が可能な場合は、屋外歩行や階段昇降訓練など在宅復帰した際に障壁となる動作を獲得し、患者様やご家族の方の不安を解消します。

退院の際の介護認定について

介護保険をお持ちの方には担当のケアマネージャーと連絡をとり、在宅復帰する際にどんなサービスを利用できるか検討します。
具体的には、訪問(看護・介護・リハビリ)、通所デイサービス(リハビリ)、ショートステイ、福祉用具貸与、住宅改修などです。

介護保険をお持ちでない方が在宅復帰する際に受傷前の生活環境では生活が難しい場合は、介護保険申請の手続きを進めます。
在宅復帰しても生活に支障がない場合は申請しません。

高齢者の維持期リハビリテーション

回復期リハビリテーションが終わると、退院して自宅や他の施設で維持期のリハビリテーションを行います。
維持期リハビリテーションの目的は、回復期リハビリテーションで回復した機能が衰えないように維持することです。

生活環境や社会環境のなかで回復した機能が衰えないようリハビリを継続していくために、地域リハビリテーション制度があります。患者様やご家族が、安定した日常生活を送れるよう支援することが目的です。
健康管理、自立生活の支援や介護の負担を軽くするため、地域リハビリテーションの一環として、在宅や施設でさまざまなサービスを受けることができます。

高齢者の入院から退院後までフローチャート

高齢者のリハビリテーションに対する城内病院の取り組み

高齢者リハビリを終えて退院するイラスト 入院直後より、患者様やご家族、または必要に応じてケアマネージャーに連絡をとり、お住いの環境や日常生活で必要な動作を把握します。
患者様の住環境や日常生活動作を知ることで、的確な訓練プログラムを提供し効率的な機能回復を図ります。

退院の準備にあたっても、ご家族やケアマネジャーに退院後に注意すべきことの説明と介護保険サービスの情報の提供を行います。
患者様の退院後のQOL(生活の質)向上のためにも、病院側と介護保険サービスの連携は重要です。

城内病院は、機能回復を最大限に図り、可能な限り自立した生活を送る能力を取り戻すことという理念のもとに、高齢者のリハビリテーションを行います。