運転中の追突事故によりむち打ち損傷(頸椎捻挫)になるケースはよく見られます。
本記事では、むち打ち損傷(頸椎捻挫)になった40代男性のケースで、受傷直後か
ら入院期間中のリハビリを詳しく紹介します。
むち打ち損傷の症例 松田さん(仮名)のケース
- 名前・年齢・性別
- 松田一郎さん(仮名) 40代 男性
- 受傷機転
- 車での通勤時、信号待ちで後方の車から追突され受傷。痛みで体動困難だったため、城内病院に緊急搬送となる。
- 診断名
- 頸椎捻挫
むち打ち損傷リハビリの目標
松田さんのご希望をお聞きしたうえで、リハビリ目標を以下のように設定しました。
- 痛み・感覚障害の増悪防止。
- 活動量減少による全身の筋力低下と持久力低下の防止。
- 手指の巧緻機能(細かい指の動きが要求される運動)と感覚の改善。
- 職場への早期復帰。
むち打ち損傷(頸椎捻挫)の症状と治癒過程に応じたリハビリ
松田さんのむち打ち損傷のリハビリは症状や治癒過程に応じて行いました。
受傷直後から入院期間中のリハビリを詳しく紹介します。
受傷直後
症状:全身の打撲痛、吐き気、めまい、頭痛、頸部痛。
2日目~
症状:頸部痛の増悪、巧緻機能低下、手指の感覚障害出現。
頸椎カラー装着:頸部の安静を保ち、痛みの軽減を図る。
リハビリ:リハビリ開始。下肢筋力訓練はベッドに寝ている時間が長いための筋力低下予防。基本動作・ADL動作(日常生活動作)指導は負担を最小限にして疼痛増悪を防止するため。
3~5日目
症状:頸部痛軽減、炎症症状の軽減。
リハビリ:温熱療法(ホットパック)開始。効果は血管拡張作用、代謝を良くする、リラックス作用があり痛み物質の除去、リンパ・血流の流れを良くする、筋・軟部組織の緊張緩和が期待できる。
温熱療法(ホットパック)
1週間後~
症状:全身の打撲痛軽減・消失。吐き気・めまい消失。
リハビリ:痛みの状態を見ながら下肢筋力訓練、基本動作・ADL動作(日常生活動作)の負荷量やレベルの拡大を図る。
2週間後~
症状:頸部痛・頭痛の軽減。
頸椎カラー除去。
リハビリ:運動療法開始。頸部周囲筋のリラクゼーションと頸部前面の皮膚・筋のストレッチを実施。
頸部周囲筋のリラクゼーション:
頭痛、頸部の張り、肩こりに有効。リラクゼーションの目的は写真のように筋肉の緊張を落とすこと。
頸部前面の皮膚のストレッチ:
胸の前に手を当て口を開けておく。その状態から上を向く。つっぱり感を感じたら口を閉じる。更に手を下に引くことで皮膚を伸ばす。
筋が短縮すれば皮膚も柔軟性が失われるため、筋肉と同時に皮膚もストレッチする。皮膚の伸張と胸鎖乳突筋を中心に伸張できる。
頸部前面の筋のストレッチ:
手を鎖骨の上に置き、頭を逆斜め上に反らせる。
筋が短縮すれば、柔軟性が失われるため筋の伸張を目的にストレッチする。
3週間後~退院まで
症状:手指の感覚改善。巧緻機能向上。頸部痛の消失。
リハビリ:ADL動作(日常生活動作)訓練、職場で必要な動作訓練の実施。
脊柱のウエービング運動:
1の写真から開始する。息を吸いながら胸を張るように2の写真の姿勢をとる。つぎに息を吐きながら1の写真の姿勢に戻す。
目的は椎体1つ1つの動きを出すことと自立神経の調節を行うこと。
キャットエクササイズ:
息を吐きながら背中を丸め10秒保持する。つぎに息を吐きながら胸を床に近づけ10秒保持する。この際、肘は伸ばしたままで腰の位置が変わらないように注意する。
背骨を正常な湾曲に戻していくための姿勢改善でよく行われるトレーニング。また背骨をしっかり動かすことで背中の柔軟性を出す。