廃用症候群(はいようしょうこうぐん)とは、病気やけがによる長期臥床によって身体を使わない状態が続くことで、心身の機能が低下してしまう状態の総称です。
特定の一つの病名というより、「使わないことによって起こるさまざまな不調の集合体」という位置づけになります。

(関連リンク)
廃用症候群予防のために理学療法士が紹介する「ベッド上でできるリハビリ」

長期臥床により生じやすい廃用症候群とは?

長期臥床により生じやすい主な廃用症候群は以下になります。

  • 運動器系:
    関節拘縮、変形、筋萎縮、筋力低下、骨粗鬆症、腰痛、肩部痛、関節痛
  • 循環器系:
    起立性低血圧、心予備力減退、下肢深部静脈血栓症、浮腫、褥瘡
  • 精神、知能:
    不安、うつ状態、仮性認知症、認知症、知的能力低下
  • その他:
    感染症(呼吸器、尿路)、異所性骨化、体重減少、低タンパク血症、便秘、尿失禁など

廃用症候群予防のための作業療法士による「離床のすすめ」

廃用症候群予防のために適切な離床による効果としては、意識障害の改善、褥瘡予防、拘縮の予防、起立性低血圧の予防、嚥下障害の予防、排泄障害の予防などがあげられます。
これらの二次障害の予防にとどまらず、活動と参加に向けた離床目標を立案し、日常的に離床を実施することで、『本人の主体性』が促され、『生活の質(QOL:quality of life)の向上』とともに身体機能や精神機能にも良い影響を与えることが期待されます。

作業療法士は、単に『起きる』だけでなく、その先の『何をするか』に焦点を当てます。以下に、活動と参加につなげる離床の具体例を挙げます。

段階 離床の目的 主な活動(Activity) 参加(Participation)へのつながり 本人らしさの表出 作業療法士の支援視点
① ベッド上での座位保持 身体機能の向上、覚醒促す テレビ・音楽・会話 テレビなどによる情報収集、他者との交流 好きな番組を選ぶ、笑顔が見られる 興味を引き出す環境設定、快適な姿勢
② ベッドサイドでの離床 ADL拡大・自立を促進 洗顔、更衣、食事動作 自分の身支度を整える 好みの服を選ぶ、習慣が戻る 動作選択の自由を尊重、声かけ
③ 車椅子移乗・病棟内移動 体力面の向上・バランス強化 食堂や談話室での過ごす 他者との交流、日中活動の拡大 仲間と話す、日課が戻る 社会的関わりを意識した場の提案
④ 病棟外活動 社会的役割の回復 屋外散歩、買い物、レクリエーション 社会・地域との接点回復 趣味の再開、買い物での選択 意欲支援、達成感の共有
⑤ 自主的離床・日課再構築 自発性・生活リズム形成 家事練習、新聞購読 退院後生活への移行 「自分らしい生活」の再獲得 習慣化支援、本人の目標共有

活動と参加につなげる離床に必要な身体機能等の評価と車椅子適合や移乗方法の提案

「活動しやすい座位保持」と「本人と介助者が安心して行える移乗」ができるようになると、日常生活で目標のある離床の継続が可能となります。
チームで離床目標を共有し、車椅子や移乗用具の適合を行います。車椅子やクッションの適合には、知識・技術を有する作業療法士などの専門職が介入することで、目標をより達成しやすくします。

車椅子の適合について

車椅子適合の知識・技術をもった作業療法士などの専門職が身体機能評価を行い、その他の評価結果と併せて車椅子適合の目標を明確にし、実際に車椅子適合を行います。
適合場面でもチームでの介入が必要になります。目標設定は本人・家族や多くの専門職で、車椅子適合の目標の優先順位や車椅子適合によるメリットやデメリットなどを話し合い、適合した車椅子でできることや限界を共有しておくと、適合後の問題発生が少なくなります。

    
適合しない車椅子での崩れた座位姿勢の例 
適合しない車椅子での崩れた座位姿勢の写真
簡易モジュラータイプによる車椅子適合後の姿勢
簡易モジュラータイプによる車椅子適合後の写真

身体能力からみた車椅子への移乗方法と福祉用具選定の目安

車椅子への移乗方法を検討する際に必要になる評価項目を包括的に評価し、本人と介助者にとって安全に安心して継続できる移乗方法を決めます。

  • 本人の身体能力・知的能力
  • 介助者の身体能力・知的能力
  • 環境:屋内・屋外・施設・自宅等
  • 他の用具:ベッド・トイレ等

下表は身体能力からみた移乗方法と福祉用具選定の目安です。

身体能力 移乗分類 用具の目安 実際の現場
立ち上がりと立位保持が可能
(手すり使用)
立位移乗 介助バー
手すり
立位移乗
離臀が可能だが立位保持困難
(手すり使用)
座位移乗 トランスファーボード
スライディングシート
端座位保持可能で臀部を横にずらす動作が可能 座位移乗
リフト移乗
端座位保持可能で臀部を横にずらす動作は不可または要介助 座位移乗、リフト移乗 トランスファーボード
スライディングシート
リフト
端座位保持困難 リフト移乗
臥位移乗
リフト
スライディングボード
座位移乗
抱え上げ

参考文献:
前田信治:知っておくべき多様な問題点 廃用症候群,誤用症候群,過用症候群老人のリハビリテーション 第6版:284-287.医学書院,2003
二木淑子:頭部外傷の急性期における作業療法 OTジャーナル29:936-942,1995
日本作業療法士協会:活動と参加につなげる離床ガイドブック 実践編,平成28年度老人保健健康増進事業