日本の死因第3位は肺炎です(厚生労働省平成28年人口動態統計)。なかでも高齢者がかかる肺炎は誤嚥による誤嚥性肺炎が多いと言われています。

城内病院の言語聴覚士による摂食機能療法の目的は、口腔内を清潔に保ち安全に食事をすることで誤嚥性肺炎を予防することと、患者様に食べる楽しみを持ち続けて頂くことです。

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高齢者の誤嚥性肺炎について

食べる楽しみを持ち続けることの重要性

食事を食べる年配者ののイラスト私たちが生きていくうえで必要不可欠である食べること。食べることを楽しむことができれば、生きていくことはもちろん、日々の生活での張り合いや生きがいにもつながります。

ところが、食べる楽しみを無くすと張り合いや生きがいといった生活の質の低下とともに、食べる動作をしなくなることで噛む力や飲み込む力が弱くなり、唾液による誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
さらには同じ口腔気管を使う「話す」機能の低下のリスクも高まります。

また、食事摂取量の減少は栄養低下による全身状態の低下を招き、廃用症候群からさらには寝たきり状態へとつながる引き金となってしまいます。

摂食機能療法とは

摂食機能療法とは、以下の食事に関する問題(摂食嚥下障害)に対する評価および訓練のことです。

  • 食事が飲み込みづらくなった。
  • 食事の時にむせる。
  • 上手に噛めない。
  • 食べ物が口からこぼれる。

摂食機能療法の目的

  • 誤嚥性肺炎の予防。
  • 患者様の栄養状態の改善。
  • 患者様が食べる楽しみを持続することで、生活の質(QOL)の維持または向上。

摂食機能療法の対象となる方と治療期間について

脳血管疾患等などによる後遺症により摂食機能に障害がある方、または、嚥下造影検査によって嚥下機能の低下が見られる方を対象とします。

治療開始日から90日間は、1日1回摂食機能療法を受けることができます。4ヶ月経過後は、月に4回まで摂食機能療法を受けることができます。

摂食嚥下障害による問題点

摂食嚥下障害による誤嚥は肺炎を起こす原因となり、現在大きな問題となっています。食べていないから誤嚥しないというわけではなく、寝ている間の唾液によっても誤嚥はおこります。

  • 栄養状態の低下(低栄養)。
  • 脱水症状。
  • 食べ物が気道に入ることによる誤嚥性肺炎。
  • 食べる楽しみを失ってしまう。

摂食嚥下機能の評価について

以下の検査やテストの結果をもとに患者様の摂食嚥下機能を評価し、患者様それぞれが安全に食べることができる食物形態、食事量、食事環境などを検討します。

嚥下造影検査

造影剤を入れた食べ物や飲み物を用いて咀嚼(そしゃく)、送り込み、飲み込みなどの動きを透視動画で確認する検査です。
食物の形状、からだの角度や1口の量などを調節しながら、安全に嚥下し誤嚥を減少させる方法を探します。

反復唾液嚥下テスト

30秒以内に出来る限り多く唾を飲み込んでもらうテストです。2回以下は問題があると考えられます。

水飲みテスト

少量の水を飲んで頂き、むせや声の変化、呼吸の変化など嚥下(飲み込み)時の問題がないかを確認します。
誤嚥した場合も肺炎の危険性が少ないよう3~5mlの冷水を用います。安全に配慮して実施します。

顔面、口腔、舌、歯の状態の確認

筋力や動く範囲、形状、色などを評価します。以下はチェック項目です。

  • 食べ物を取り込めるよう口をしっかり開けることができるか。
  • 口に入れた食べ物がこぼれないよう口をしっかり閉じることができるか。
  • 歯の状態:欠損している歯、齲歯(うし:虫歯)、義歯が合っているかなど。
  • 食べ物を噛む力や顎の動き。
  • 舌を動かして食べ物をまとめて喉に送り込むことができるか。
  • 舌の色や形状、筋力、味覚の変化がないか。
  • 飲み込んだ後に食べ物が口の中に残っていないか。

姿勢などの確認

自分の力で座ることができるか、首やからだが前後左右に傾いていないかなど患者様が安全に食事できる姿勢を取れているかを評価します。

摂食嚥下機能に関する訓練について

摂食嚥下機能に関する訓練には、食物を用いずに行う間接訓練と安全に食べることができる形状の食物を用いて行う直接訓練があります。

摂食嚥下機能の間接訓練とは

食物を用いずに行う訓練です。誤嚥の危険性が高い場合は間接訓練を重点的に行います。
万が一、唾液を誤嚥した場合でも肺炎にならないよう、口腔ケアにより口腔内を清潔に保ちます。また、嚥下体操や嚥下に係る筋力増強訓練を行います。

摂食嚥下機能の直接訓練とは

安全に食べることができる形状の食物を用いて訓練します。姿勢や首の角度、1口の量など誤嚥を防止し安全に食べることができるよう練習します。

また、自力での食事が困難な場合は、食物をのせたスプーンを手渡しすることで口に運んでもらう動作を促すなど食事動作の練習も行います。

言語聴覚士の摂食機能療法は、「患者様がその人らしく生活できる」ために

患者様が飲み込みづらい、むせる、上手に噛めないなど食事に関する問題を抱えていても、患者様に合わせて環境や食事の内容を調整することで、安全に食べることができる場合があります。

そして、ほんの少しでも食べ続けることで口腔機能を保ち、誤嚥性肺炎の予防にもなるのです。
また、口腔機能は「話す」こととも深く関わります。食事やコミュニケーションは、人が人として生きていくうえで大切な生活の質(QOL)に大きく影響します。

城内病院の言語聴覚士は食事やコミュニケーションを通して、「患者様がその人らしく生活できるように」、患者様に寄り添ったリハビリに努めています。