クラシックバレエやサッカーをしている中高生が、「つま先立ちの姿勢や足の甲を伸ばすと足首の後ろに強い痛みが出ます」と訪れることがあります。
今回は、このようなケースで疑われる三角骨障害について解説します。
三角骨障害とは?
三角骨とは、足関節の距骨の後ろにある過剰骨です。過剰骨とは、文字通り本来ない過剰にある骨です。多くの場合片足だけに見られます。
珍しいような感じがしますが、三角骨は健常者の約10%にあるとされています。
三角骨障害は、足関節後方インピンジメント症候群の1つです。インピンジメントとは、「挟まる」「衝突」を意味します。
つま先立ちなどで足の甲を伸ばした状態のときに、過剰骨である三角骨が足関節後方で脛骨(けいこつ)と踵骨(しょうこつ)の間に挟まれて痛みが生じることを三角骨障害と呼びます。
三角骨障害になりやすい方と症状
三角骨障害は2つの条件が重なったときに生じます。1つ目の条件は足関節後方に三角骨があること。2つ目の条件は部活動などで熱心にスポーツをしていることです。
とくに、若いバレエダンサーやサッカー選手に多く見られます。
クラシックバレエのポアント(つま先立ち姿勢)やサッカーのインステップキック(足首を伸ばして甲でボールを捉えるキック)で、足の甲を強く伸ばす姿勢(底屈)を何度も取るためです。
足首を伸ばしたときに、足関節後方で三角骨が脛骨(けいこつ)と踵骨(しょうこつ)の間に挟まれて可動域が狭くなると足首を伸ばしにくくなります。
無理に強く伸ばそうとすることで、足首の後ろ(アキレス筋付近)に強い痛みが生じます。
三角骨障害の検査とは?
問診では部活動などのスポーツはもちろん、「どのよう時に、どこが、どのくらい痛むか」を伺います。
つぎに、底屈テストで足首を強制的に伸ばして痛みや可動域を、レントゲン(X線)撮影やCT撮影で三角骨の有無や足関節後方の骨の状態を確認します。
三角骨障害の治療とは?
患者様は中高生を中心に若い学生が多いため、年齢を考慮して治療は基本的に保存的療法を選択します。
保存的療法でも改善しない方、痛みが強く日常生活に支障がある方、どうしても早くスポーツに復帰したい方には手術療法を選択します。
三角骨障害の保存的治療法
痛みが強いときは炎症を抑えることを優先します。強い痛みが治まれば、足関節の可動域拡大や周囲筋強化を目的にリハビリを行います。
- スポーツの休止:安静を保つため。
- 薬物治療:鎮痛剤の服用や局所注射で炎症を抑える。
- 固定:テーピングや装具などで足の甲が過剰に伸びることを制限する。
- リハビリ:足でタオルを掴むタオルギャザーやゴムバンドを使ったアンクル訓練など。
三角骨障害の手術療法
城内病院では、関節鏡視下手術という患者様へのダメージが少ない低侵襲手術を行います。 アキレス腱の両側2ヶ所を5mmほど切開して、一方から入れた内視鏡で内部を見ながら、もう一方から器具を入れて三角骨を取り除きます。
術後の入院は2週間ほど。入院中に足関節の可動域訓練や周囲筋強化訓練などのリハビリをきちんと行えば、退院後にスポーツに復帰できます。