橈骨(とうこつ)とは前腕の2本の骨のうちの太い方。遠位端(えんいたん)とは橈骨の手首付近のこと。
高齢の患者様が多い城内病院では、撓骨遠位端骨折は大腿骨頸部骨折のつぎに多い骨折です。
その理由は、骨粗しょう症により骨が脆くなっている高齢者は、転倒時に反射的に手をついただけで簡単に手首を骨折するからです。
さらに高齢者の場合は、治療が難しい手首関節内の複雑骨折が多く見られます。
転んで手をついて腫れや痛みがあれば、骨折の可能性があります。治療が遅れると、手の動きに障害や変形が残る可能性があるため、なるべく早く病院で適切な検査と治療を受けましょう。
(関連リンク)
城内病院整形外科の手外科について
橈骨遠位端骨折のリハビリテーションについて
橈骨遠位端骨折の原因となりやすい方
橈骨遠位端骨折の原因で最も多いケースは、転倒時に反射的に手をつくことです。
転倒時に反射的に手が出ることから、高齢者の中でも60~70代の比較的に若い方に多い傾向があります。
圧倒的に高齢女性に患者様が多いのは、骨粗しょう症で骨が脆くなっている高齢女性が転倒時に手をついただけで簡単に手首の骨が折れてしまうことが理由です。
男性や若い方が骨折する場合は、仕事中に脚立などの高い所から落ちたり、事故などで強い外力が手首に加わるケースです。
橈骨遠位端骨折の症状
受傷後、すぐに手首に強い痛みと腫れが現れます。指に力が入らず十分に手を握ることができません。
手のひら側をついて骨折した場合、手首がフォークを伏せたように変形することもあります。
骨折による圧迫や手首の腫れによって、手根管内の正中神経が圧迫されて手や指がしびれることもあります。
治療後しばらくして、親指を伸ばす腱(長母指伸筋)が骨折部のギザギザに当たり切れることがあります。転位(骨折によるずれ)が少ないケースで多く見られます。
橈骨遠位端骨折の病態
橈骨遠位端骨折は骨の転位(ずれ)によって病態が分類されます。
コレス骨折
転倒時に手のひらをついて、手首側の骨片が手の甲側にずれることをコレス骨折と呼びます。コレス骨折は橈骨遠位端骨折のなかで最も多いタイプです。
スミス骨折
転倒時に手の甲をついて、手首側の骨片が手のひら側にずれることをスミス骨折と呼びます。
バートン骨折
関節内の手の甲側の転位(ずれ)は背側バートン骨折。関節内の手のひら側の転位は掌側バートン骨折。
関節内の粉砕骨折は骨が脆くなっている高齢者に多く見られます。
橈骨遠位端骨折 城内病院での診断と検査
「転んで手をついたあとに、手首が腫れて痛い」と患者様が来院されれば、医師はまず撓骨遠位端骨折を疑います。
検査はレントゲン(X線)撮影を行い、骨折部の状態を正確に確認します。
骨折部の状態で治療法が異なるため、骨折線が1本だけの単純な骨折なのか、関節内の複雑な骨折なのかを正確に確認する必要があります。
必要があればCT装置でも詳しく検査します。
橈骨遠位端骨折 城内病院での治療
撓骨遠位端骨折の治療は、骨折した骨を元の位置に戻すことを第一とします。
まず、徒手整復を行います。整復とはずれている折れた部位を、元の正常な位置に戻すことです。
麻酔をかけて、レントゲン画像をもとに骨の位置を確認しながら、手を指先の方向に引っ張った状態でずれた骨折部を元の正常な位置に戻す整復操作を行ないます。
必要であれば、X線透視装置を使ってTVモニターで骨の位置を観察しながら、整復操作をすることもあります。
徒手整復により骨折部が安定すれば ギプスやギプスシーネで固定します。痛みが強い場合は痛み止めの薬を服用します。
定期的に通院していただいて固定した骨折部がずれていないかを観察します。
撓骨遠位端骨折 手術療法について
徒手整復しても骨折部が不安定な場合があります。また、関節内の複雑な粉砕骨折は徒手整復では安定した整復位が得られないことがあります。これらの場合は手術療法を検討します。
現在主流となっている撓骨遠位端骨折の手術法は、ロッキングプレート(ネジとプレートで骨折部を一体化できる器具)を使って、骨折部を元の正常な位置に戻すプレート固定法です。
プレート固定法のメリットは、術後早期に手首の関節を動かせることです。
高齢者が術後1月半~2月間ほどギプス固定を行うと、手首の関節の可動性が失われることがあります。
プレート固定法は、日常生活動作の範囲なら1週間後には手首を動かすことが可能です。
患者様の年齢や骨折の程度によりますが、入院期間は約2週間。手首の関節の早期回復のために、術後翌日からリハビリを行います。
プレート固定法で手術できない成長過程の子供は経皮鋼線刺入法、粉砕程度が強い骨折は創外固定法を選択することもあります。