母指MP関節とは、親指の基節骨と第1中手骨の間にある中手指節関節(Metacarpophalangeal joint)のことです。親指の上から2番目の関節で付け根に位置しています。
母指MP関節の側面を「尺側側副靭帯」と「橈側側副靭帯」が両方から支えることで、親指の安定性は維持されています。
この関節の側副靭帯が損傷することを母指MP関節靭帯損傷と言います。
母指MP関節靭帯損傷の症状とは?
ケガや事故などで母指MP関節の靭帯を損傷すると、急性期には関節に腫れや痛みが生じます。
靭帯が損傷し緩むことで、親指は安定性を失い動かしづらくなります。物をつまむ時や蓋を開ける時などには痛みを覚え、力を入れにくくなります。
母指MP関節靭帯損傷の原因
直接的な外力で親指に横方向から強い力が加わるケースが、母指MP関節靭帯損傷のおもな受傷原因です。
外力を受ける方向によって損傷は、内側の尺側側副靭帯損傷と外側の橈側側副靭帯損傷に分かれます。
スポーツ活動中によく見られ、ボールやストックなどを持った状態で転倒することのある球技やスキー、ラグビーなどの接触が多いスポーツでの転倒や衝突が挙げられます。
また、不慮の事故や転倒時に手をついた際にも発生することがあります。
母指MP関節靭帯損傷の検査と診断
まず、問診にて医師は受傷契機や痛みの程度、痛む部位などを患者様に伺います。
母指MP関節靭帯損傷を疑えば、関節の不安定性を評価するためX線撮影を行います。X線撮影で靭帯に付いた小骨片の骨折の有無を確認します。
また、親指に横方向の負荷を掛けて撮影するストレス撮影では関節の不安定性をよりハッキリと確認できます。
X線撮影では靭帯の損傷を確認できないため、靭帯の断裂や部分的損傷を視覚化するのに有効なMRI検査を行うこともあります。
母指MP関節靭帯損傷の治療について
軽度から中等度の靭帯損傷で、手術を必要としないケースでは保存的療法を選択します。靭帯損傷が重度のケースや保存的療法で改善が見られないケースでは手術療法が選択されることがあります。
母指MP関節靭帯損傷の保存的療法
- 冷却:
受傷直後に患部を冷やすことで、炎症を抑え痛みを和らげることができる。 - 固定:
軽度から中等度の損傷のケースでは、患部を安静に保つために、サムスプリント(アルミ合金の両面にウレタンフォームを貼り合わせた副木)や専用の固定具を使用して親指を固定する。通常、3〜6週間固定する必要がある。 - 薬物療法:
痛みや炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方することがある。 - 物理療法:
炎症が落ち着いた後、理学療法士の指導の下で運動療法を行う。関節の可動範囲を回復させ、筋力を強化することが目的。
母指MP関節靭帯損傷の手術療法
靭帯が完全に断裂しているケース、断裂した靭帯が反転して引っかかっているケース、保存的療法で改善しないケースでは、手術療法を選択することがあります。手術では靭帯の修復または再建が行われることが一般的です。
どちらの手術も術後には必要期間ギプス固定をして頂きます。
- 靭帯修復手術:
アンカーを使用して断裂した靭帯を骨に縫い付けて固定する手術。 - 靭帯再建手術:
移植する腱を骨に穴をあけたトンネル内に通して靭帯を再建する。