変形性肘関節症とは、上腕骨、橈骨、尺骨から構成されている肘関節の軟骨がオーバーユース(酷使)や加齢などですり減り、肘関節が変形する病気です。
変形性肘関節症の症状
おもな症状は動作時の肘の痛みです。肘にはあまり荷重がかからないため、安静時には痛みが軽減します。
肘の可動域が制限され、肘を曲げ伸ばす日常生活動作(食事、洗顔、歯磨きなど)に支障が生じます。
放置して変形が進行するとロッキングや肘部管症候群につながることもあります。
ロッキングとは、急に肘がある角度で動かず固まり、無理に動かそうとすると激痛が生じる状態。
部管症候群とは、変形した部分が肘の内側を通る尺骨神経を圧迫して、小指と薬指の一部のしびれ、手の筋肉の痩せ、小指と薬指の変形などが生じる神経障害。
(関連リンク)
肘部管症候群とは尺骨神経が障害されると指と手が痺れる病気
変形性肘関節症 原因となりやすい方
おもな原因は、オーバーユース(酷使)や加齢で肘関節の軟骨が擦り減ることです。関節でクッションの働きをする軟骨がすり減ると、骨がぶつかり合い変形が生じます。
肘関節をオーバーユースするスポーツや仕事をされている方に多く見られます。
- 野球の投手の投球動作。
- テニスやバドミントンなどのラケットを振る動作。
- 大工など肘を酷使する仕事。
- 重いものを継続的に持つ重労働など。
肘関節の骨折や脱臼などの外傷の後遺症として発症することもあります。
変形性肘関節症の病態
オーバーユースや加齢により関節でクッションの働きをする軟骨が擦り減ると、関節の隙間が狭くなり骨がぶつかり合うと不安定性が増します。
その不安定性を解消するために接地面積を広げようと自己防衛反応でできるものが骨棘(こつきょく)です。骨棘とは、関節面の軟骨が肥大増殖し硬く骨化した「とげ」のようなもの。
骨棘ができて安定化するということは、肘関節が動きづらくなり可動域に制限がかかります。このような状態で無理やり肘を動かすと強く痛みます。
尺骨にできた骨棘が肘の内側を走っている尺骨神経を圧迫すると、小指と薬指の一部のしびれ、手の筋肉の痩せ、小指と薬指の変形などが生じる神経障害の肘部管症候群につながることもあります。
この骨棘は折れてかけらとなり、肘関節内で遊離体となることがあります。「野球の投手が、肘のネズミを手術で除去した」というニュースのネズミとは骨棘の遊離体のこと。
遊離体が関節内に引っかかるとロッキングの原因となります。
変形性肘関節症の城内病院の検査・診断
問診で患者様のお仕事、スポーツ歴の有無、肘が痛む契機や症状などを伺います。
触診では、腫れ・圧痛(押すと痛む)の有無、曲げたりひねると痛むかを確認します。
X線(レントンゲン)で骨棘・遊離体の有無、関節の隙間、軟骨下骨の変形を確認します。 X線画像に異常が見られれば、CTでより詳しく検査することもあります。
変形性肘関節症の城内病院の治療
変形性肘関節症の治療の基本は保存的療法です。手術療法はあきらかに骨棘や遊離体がある場合に選択します。
変形性肘関節症の保存的療法
保存的療法は、患部の炎症を抑えて痛みを緩和させることが目的。
- 安静:三角巾、シーネ・装具を用いて固定し患部を安静に保つ。
- 薬物療法:消炎鎮痛剤で炎症・痛みを緩和。さらに痛みが酷いときはブロック注射。
- 物理療法:リハビリで肘周囲筋を鍛えて関節への直接負荷を抑える。温熱療法。
変形性肘関節症の手術療法
日常生活に支障をきたす場合には、痛みの緩和や関節可動域の拡大を目的として骨棘切除術や遊離体除去術を行います。 症状の程度や患部の位置により関節鏡視下手術か直視下手術を選択します。
イラスト出典:一般社団法人 日本整形外科学会 「整形外科シリーズ 15.変形性肘関節症」