寝違えて首を擦る女性のイラスト 朝起きて首が痛くて回らず「ああ、首が痛いなあ、寝違えたのかな」と思ったこと、誰もが一度ならずありますよね。
このように睡眠から目覚めたときに首の後ろや首から肩にかけて痛みが出ることをいわゆる「寝違え」と呼びます。

寝違えは2・3日我慢すればそのうち治るとわかっていても、首を動かすととても痛くて辛いため日常生活にも支障が出ます。
また、寝違えの症状に似た頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症などの本格的な病気の可能性もあります。
寝違えの症状が治らず長く続くときや頻繁に寝違えのような症状が生じる場合には、整形外科を受診して検査することをお勧めします。

本記事はいわゆる「寝違え」、正式には「急性疼痛性頸部拘縮(きゅうせいとうつうせいけいぶこうしゅく)」の原因や病態、予防や治療について紹介します。

寝違えの症状

いわゆる寝違えの特徴的な症状は、睡眠から目覚めたときに首を動かすと、首の後ろや首から肩にかけて生じる筋肉痛のような鈍い痛みです。
特定の方向を向くときに痛みが強くなり、痛みで首を動かせないこともあります。

ほとんどのケースで首から肩にかけての痛みは2〜3日で治まりますが、安静時でも痛んだりしびれも生じる重度な症状に至るケースもあります。

寝違えの原因とは?

朝起きてから首が痛くて動かすことができないと来院される患者様をX線やCTなどの画像検査をしても、寝違えの原因である異常がみられないことがほとんどです。
よって今のところ、寝違えが生じる明確な原因は不明とされています。

原因ははっきりとしていませんが、目覚めた後に痛みが生じるため睡眠時の筋肉の血流不足(阻血)・疲労や関節包の炎症などが原因ではないかと考えられています。

  • 睡眠中の不自然な姿勢によって、一部の筋肉が圧迫され血流不足(阻血)が生じる。しこりができることも。
  • 飲酒後の睡眠や疲れ果てての睡眠で寝返りを打てずに長時間同じ姿勢になる。
  • 睡眠中に体が冷えて血行が悪くなる。
  • 前日の過度なスポーツや労働による筋肉の疲労などでこむら返りが生じる。
  • パソコンなどの事務仕事で頭を一定位置に長時間保持することで頸部の筋肉に負担が生じる。
  • 枕の高さがあわず首の骨に負担がかかると、頸椎の後ろの関節の袋(椎間関節の関節包)や靭帯が炎症する。

寝違えの検査と診断について

痛みが軽微であれば、時間経過とともに痛みが改善して、徐々に首を動かすことが可能になり自然と治っていくことが多いです。
痛みが強く日常生活に支障をきたす場合、なかなか治らない場合には整形外科を受診することをお勧めします。

問診にて痛みの程度、痛む部位、首の動きの制限、手足のしびれの有無、手足の動きに異常はないか、ハンマーで手足を叩いて反応を見る深部反射などを確認します。
検査ではX線やCT、MRIなどの画像検査が行われます。

痛みの原因が寝違いの場合、画像検査では異常がみられないことがほとんどですが、症状が似た頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症、転移性脊椎腫瘍、脊髄腫瘍、強直性脊椎炎、関節リウマチなどの病気が、画像検査で発見されることもあります。

寝違えの治療とは?

発症直後は、安静を第一に痛む方向に首をなるべく動かさないこと。無理に首を動かす、風呂や飲酒、強めのストレッチやマッサージは炎症がひどくなり、よけいに痛みが増す場合があります。
発症直後にしっかりと安静を保てば、症状改善までの時間を短縮することが期待できます。

軽微な寝違えは、治療をしなくても自然と治ることがほとんどです。
首を動かせないほど痛みが強いケースやなかなか治らないケースでは、整形外科を受診して医師より適切な治療を受けることをお勧めします。

  • 湿布の貼付:炎症を抑えて痛みを取る薬剤が含まれる。痛む部分に貼る。
  • 鎮痛消炎薬や筋弛緩薬の内服
  • 漢方薬(独活葛根湯)の内服:こむら返りの治療で使う漢方薬。筋肉の痙攣の緩和に有効。
  • 局所麻酔:痛い筋肉や筋膜に注射して痛みを軽減する。

寝違えをおこさないためには?

寝違えをおこさないためには、日常生活を見直すことも大切です。

  • 睡眠環境の改善:枕や布団などの寝具が自分に合っているかを見直す。適度に寝返りが打てるように寝具を整える。
  • 泥酔状態・過度に疲れた状態で寝るのを避ける。寝返りを打てずに長時間同じ姿勢になるため。
  • 首に負担がかかる姿勢をとらない。スマートフォンやパソコンの使用時には姿勢に気を付ける。
  • 首や肩周りの筋肉ストレッチで首肩まわりの血行を良くして疲れをためない。
  • 就寝前の温浴で寝違えをおこす筋肉を緩める。