頭痛は大きく1次性頭痛と2次性頭痛に分類されます。1次性頭痛は、特定の病気が原因ではなく、頭痛そのものが疾患であるタイプで、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などがあります。
本記事では、日本人に最も多いとされる「緊張型頭痛」について、症状・原因から対処法、治療法、予防法を詳しく解説します。
緊張型頭痛は、頭痛の中でも最も一般的なタイプであり、成人の約30〜80%が生涯に一度は経験すると言われています。
緊張型頭痛は、頭部の筋肉の緊張やストレスによって引きおこされる頭痛で、後頭部を中心に両側から頭全体が締め付けられるような鈍い痛みが特徴です。片頭痛とは異なり、拍動性の痛みや吐き気を伴うことは少ないです。
一般的に、軽度から中等度の痛みが持続し、日常的な活動には支障がないことが多いですが、慢性化すると集中力の低下や睡眠障害を引き起こし、生活の質を大きく低下させます。
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緊張型頭痛の原因は精神的なストレスと身体的なストレス
緊張型頭痛の明確なメカニズムは解明されていませんが、原因はおもに精神的なストレスと身体的なストレスによるものと考えられています。
- 精神的なストレス:仕事や人間関係のストレス、不安、心配、緊張、抑うつなどにより、首や肩の筋肉を緊張させ、頭痛を引きおこす。
- 身体的なストレス:長時間同じ姿勢での作業、姿勢不良でのパソコンやスマホの使用、首や肩の筋肉の酷使、疲労、肩こり・首こり、眼精疲労などにより、筋肉の緊張を招き頭痛を引きおこす。
- その他の要因:睡眠不足、ホルモン異常、歯の食いしばり・顎関節症、気温・気圧の変化なども原因となることがある。
緊張型頭痛の症状は?
緊張型頭痛は、頭全体や後頭部、首筋にかけて、締め付けられるような鈍い痛みが生じる頭痛です。片頭痛のようにズキズキと痛むことはなく、吐き気や嘔吐も伴うことは少ないです。
肩こりや首こりを伴うことが多いのが特徴で、痛みは数十分から数日続くことがあり、慢性化すると日常生活に大きな影響を与えることがあります。
- 後頭部を中心に両側から頭全体が締め付けられるような鈍い痛み。
- 肩や首のこりを伴うことが多い。
- 痛みは比較的軽度〜中等度で、日常生活ができなくなるほど強い痛みはまれ。
- 毎日のように起こることもあり、慢性化しやすい。
- 吐き気や嘔吐は少なく、光や音への過敏もあまり見られない。
緊張型頭痛 ~痛みがあるときの対処法~
緊張型頭痛の痛みがあるときの対処法として、以下の方法が効果的です。
- 姿勢を正す:
姿勢不良での長時間のデスクワークなどは、首や肩の筋肉が緊張しやすくなる。首・肩をゆっくり回したり、背筋を伸ばすことで筋肉の緊張が緩和され、頭痛の軽減につながる。 - 温める:
ホットタオルや入浴などで首や肩を温めると、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減する。 - マッサージ:
首や肩を軽くマッサージすると、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減することがある。 - 市販薬を服用:
軽度から中等度の頭痛であれば、市販の鎮痛薬で痛みを抑えることができる。 - カフェインを摂取:
カフェインには血管収縮作用があり、一時的に痛みを和らげることがある。ただし、過剰摂取は逆効果になることもあるので注意が必要。 - 安静にする:
静かな場所で目を閉じて休む。強い光や音などの刺激を避け、静かな環境でリラックスすることが大切。
緊張型頭痛の治療 薬物療法
緊張型頭痛の薬物療法は、西洋医薬での頭痛がおきた時の「急性期治療」と頭痛の発症や頻度を減らす「予防療法」があります。ほかに漢方薬にも効果が期待できるものがあります。
患者様の状態に応じて、西洋医薬と漢方薬を組み合わせて処方することもあります。
頭痛がおきた時の「急性期治療」
急性期の痛みを緩和するために以下の鎮痛薬(痛み止め)が処方されます。ただし、鎮痛薬の過剰な使用は「薬物乱用頭痛」をおこす可能性があるため、週に2〜3回以内の使用が推奨されます。
- アセトアミノフェン:
作用が穏やかで副作用が少ないため、軽度〜中等度の頭痛に有効。妊娠中でも使用可能。カロナール。 - NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):
炎症を抑え、筋肉の緊張による痛みにも効果あり。ロキソプロフェン(ロキソニン)、イブプロフェン(イブ)、ナプロキセンなど
頭痛の発症や頻度を減らす「予防療法」
頻繁に頭痛が起こる場合や生活に支障をきたす場合は、以下の予防薬が処方されます。予防療法は6〜12か月ごとに医師により効果を評価し、継続や中止が判断されます。
- 筋弛緩薬:
筋肉の緊張を和らげ、頭痛を予防する。チザニジン、エペリゾンなど。 - 抗うつ薬・抗不安薬:
アミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬やアルプラゾラムなどの抗不安薬が使用され、ストレスや不安が軽減する。
緊張型頭痛 漢方薬による治療
緊張型頭痛に対する漢方薬での治療は、患者様の体質や症状のタイプに応じて選ばれるオーダーメイド的なアプローチです。頭痛そのものだけでなく、肩こり・ストレス・自律神経の乱れなどの背景にアプローチできるのが漢方の強みです。また、西洋薬で効果が不十分な場合にも補助的に使えます。
緊張型頭痛に効果が期待される漢方薬には以下のものがあります。
- 葛根湯(かっこんとう):
首や肩のこりを伴う緊張型頭痛に効果。体力のある方向け。 - 呉茱萸湯(ごしゅゆとう):
冷えや吐き気を伴う頭痛、慢性的な頭痛に。体を温め「気」や「血」の巡りを改善。 - 釣藤散(ちょうとうさん):
高血圧傾向で慢性的な頭痛に効果的。体力中等度でめまいや肩こりを伴う場合に適する。 - 五苓散(ごれいさん):
天気や気圧の変化で悪化する頭痛や頭重感に有効。利水作用で体内の余分な水分を調整。 - 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):
冷え性で、肩こりやめまいを伴う頭痛に用いられる。
緊張型頭痛 ~日常生活での予防法~
緊張型頭痛は、姿勢、ストレス、生活習慣が大きく関係するので、日常生活の中での工夫やセルフケアがとても重要です。予防につながるポイントを具体的に紹介します。
- 姿勢を正しく保つ:
パソコンやスマホを見るとき、前かがみや猫背にならないように意識する。デスクワーク中は、画面の高さを目線と同じにして背筋を伸ばす。 - 長時間の同じ姿勢を避ける:
作業中は、こまめに休憩を挟む。1時間に1回は軽くストレッチや立ち上がる習慣を。 - ストレスをためない・発散する:
自分に合ったストレス解消法を見つけ、こまめにストレスを解消しましょう。心身のリズムを整えるには軽い運動(ウォーキング・ヨガなど)も効果的。 - 首・肩まわりの筋肉をほぐす:
デスクワーク後やお風呂上がりに肩や首を回すストレッチやマッサージを。ホットタオルや入浴で温めると、血行が良くなり筋肉の緊張が和らぐ。 - 規則正しい生活を送る:
十分な睡眠時間を確保し、バランスの取れた食事を心がけましょう。アルコールやカフェインの過剰摂取をさける。脱水でも頭痛を起こしやすいので、こまめに水分をとる。