医師のイラスト 漢方医学には未病という考え方があります。未病とは病気と言うほどではないけれど、健康でもない状態のこと。一方、養生とは未病の初期段階で食習慣や運動習慣を見直し、漢方医学的な考えをもとに日々を健康的に暮らすことです。

漢方医学の未病と養生は、その人の体の本来持っている免疫力と自然治癒力を高めることで、日々を健康的に暮らし病気を未然に防ぐという考え方です。未病と養生という2つの考え方を詳しく見ていきましょう。

未病とは

漢方医学には未病という考え方があります。未病は、病気と言うほどではないけれど、健康でもない状態のこと。すなわち、半病気で病気に進行しつつある状態です。未病には、「自覚症状はないが検査に異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査に異常がない状態」の2つのケースがあります。

未病という言葉は、現代社会の私たちへ強い警鐘を鳴らします。日本人の3大成人病と言われる、がん・心臓病・脳卒中は死因全体の60%を占めています。高血圧・高脂血症・脂肪肝・糖尿病・メタボリック症候群などの生活習慣病や喫煙は、3大成人病の大きな要因となっています。

偏った食生活や運動不足などが原因の生活習慣病は、「自覚症状はないが検査に異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査に異常がない状態」の2つのケースがあります。 この状態を漢方医学では未病といいます。つまり、西洋医学でも重視される病気に至る過程こそ、まさに未病そのものです。 

生活習慣病が3大成人病に発展することを防ぐために、西洋医学、漢方医学にこだわることなく、予防医学として、未病のサインの発見と治療が現代社会より求められています。 漢方専門医は、未病を病気に進行しつつある状態ととらえ、僅かな身体の異常や偏りからも未病のサインを発見し、食事・生活習慣の改善指導や漢方薬の処方を行います。患者様に適切な食事・生活習慣に改善していただくことで、本格的な病気への移行を防ぎます。

未病、つまり健康診断や検査などで異常がなくても、「疲れやすく、だるい」「体が冷えて困る」などの症状がある場合は、一度漢方専門医をお訪ね下さい。

養生とは

患者のイラスト 養生とは、漢方医学的な概念のもとに、食事、運動、休息、睡眠、つまり、日常生活を病気にならないよう健康的に過ごすことです。
養生の方法は人それぞれに違います。漢方医学的体質である「証」にもとづいて、中庸、つまり、体と心のバランスがとれた状態を保つために、養生を積み重ねることが重要です。

たとえば、食養とは、毎日の食生活での養生。毎日の食生活の結果が、私たちの体と心を作ります。偏った食生活は、体と心のバランスを崩します。
体が冷えやすい患者様には、体を温める食事をおすすめします。冷え性で胃腸が悪い人には、「生姜を刻んで料理に入れてみたらどうでしょう。」と、漢方専門医が食事の改善指導を行います。
また、毎日の食事で養生することは、免疫力を高めるので、結果としてアンチエイジングにも効果があります。

養生は、中国の影響を受けて長い間の経験を体系化した知恵です。昔の人は食事や自然にあるものを利用して、免疫力や自然治癒力を高めることで、日々を健康に暮らすという知恵を獲得したのです。
漢方治療の基本は養生です。現代の漢方専門医も、診察の際にあなたにあわせた細かい養生を指導いたします。