診察に訪れる患者様の訴えはさまざまです。
「なんとなく調子が悪く、すっきりしない」、「体が冷えて困る」、「疲れてどうしようもない」など、西洋医学では原因がはっきりしない症状を訴える方も、よくいらっしゃいます。このような症状に適合する西洋医薬はなかなかありません。

漢方専門医は、五感と経験を駆使してあなたの「証」を特定します。そして、体と心の偏った病態を見極めて、体と心の両面に対応する漢方薬を処方します。この漢方独自の診察特性を活かすと、漢方はオーダーメイドな治療になります。

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漢方専門医が、あなたの「証」を特定して漢方薬を処方する理由

漢方専門医による診察

では、どのように診察は、行われるのでしょう。

問診
最初に、患者様を見て元気が良さそうなのか無さそうなのか。声を聞き、張りがあるのか弱いのか。体調、体質(暑がり 寒がりなど)、日常生活の習慣などをお聞きします。患者様の人物像をおおまかに推定します。時間は5分から10分程度。
脈診
強いか弱いか、早いか遅いか。体力を判断。
舌診
色・舌下静脈が拡張してないか、「血」の流れを見る。さらに、舌の表面の苔の分布状態や色を観察し、舌全体の乾燥・湿潤状態を確認する。
腹診
腹力の強さを見る。指で押したり、なでたりしながら特異的な圧痛点、特異的な拍動の場所や腹直筋の異常な緊張状態を探す。 日本漢方独自の診断法。「虚実」を見極め、生薬や漢方が適合する箇所の確認をする。

漢方専門医のすべての五感に照らし合わせて、診察を行います。
診断で得られた多数の要素から、経験に基づいてあなたに適合する漢方薬を処方します。

症状・病態に合わせたオーダーメイド治療

漢方医師イラストたとえば、有名な葛根湯は、経験医学的に多くの人の風邪の初期に効きやすい漢方薬です。ただ、風邪が長引き弱ってしまった状態にはあまり効果がないどころか、むしろ胃腸障害をおこす可能性があります。
葛根湯が良く効く症例は、風邪の初期で寒気がとても強いけどまだ汗をかいておらず、脈が触っただけで強い脈動を感じる時です。このような脈や症状のときは、漢方医学でいう太陽病期(六病位の1つ)とよばれる状態で、葛根湯一包で風邪が治癒することもあります。

風邪の後期で体力が落ちた人には、体力を増強する漢方薬を処方することがあります。さらに、なかなか治らず体が衰弱して食事も取れない人には、それに合わせた漢方薬があります。診察時の症状・病態によって、効果が期待できる漢方薬を選択します。

また、インフルインザ初期に使う麻黄湯は、悪寒があるとき自然治癒力を高めたうえで、体温をある程度上げて発汗を促します。発汗によって体温を下げる効果があります。
ただ胃腸の丈夫な若い人に用いることが多いです。なぜなら、もともと胃腸が丈夫でなく体力が低下傾向の高齢者は、体温を上げ大量に発汗させてしまうと、さらに体力が落ちて、麻黄が胃にもたれ食欲をなくしたり、多量の発汗により脱水症状になる可能性があります。

症状・病態によっては、西洋医薬と漢方薬を使い分けるケース、また、両者を併用することもあります。漢方薬の処方には、体力など患者様の病態に合わせて、総合的な判断が必要です。

今、患者様はどのような状態なのか。どういうレベルで体力が落ちているのか。診察において、患者様の病態を適切に見極めて、それに応じた漢方薬の処方を行います。

漢方薬自体もオーダーメイド

漢方薬を調合する医師イラスト

診察したうえで、患者様の病態に合わせ、生薬1つ1つの分量を調整します。ただその場合、許容量、限界量を超えないように注意します。「この人にこの生薬は少なくて良い」など、生活スタイルに応じて薬を処方します。

基本的に、漢方薬は食前食間の服用です。生活スタイルによって、時間通りに服用できない患者様には、「お腹がすいたときに、間隔をあけて飲んでもいいよ」と指示することもあります。
たとえば、不眠で悩んでいるが、睡眠薬(西洋医薬)を使いたくないと希望される患者様に処方する漢方薬は、原則として1日3回服用することになっています。しかし、昼間から眠くなっても意味が無いので、「夜だけ飲んで下さい。」と指導したこともあります。

(関連リンク)
漢方薬の効果と副作用

はっきりとした病名がつけられない症状をお持ちの方は、漢方専門医をお訪ね下さい

  • 検査しても症状がはっきりしない
  • イライラがつづく
  • 気が滅入ってしまう
  • 女性に多いのぼせ冷え性
  • 虚弱体質
  • 疲れやすく食欲がない
  • ちょっと動いただけで体がだるい
  • 女性の更年期障害に悩まされている方
  • 尿がすっきり出ない
  • 頻尿
  • 原因の分からない慢性的な痛みがある

西洋医学では、はっきりとした病名がつけられない症状をお持ちの方は、一度、漢方専門医をお訪ね下さい。漢方専門医は五感と経験を駆使して、あなたの「証」を特定しオーダーメイドな漢方治療を提供します。