漢方専門医による診察であなたの「証」を特定できたら、あなたの体と心をバランスのとれた状態にするための漢方薬が処方されます。
では、漢方薬とはどのような成分で、どのような症状・病気に効果があるのでしょう。詳しく見ていきましょう。
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漢方専門医が、あなたの「証」を特定して漢方薬を処方する理由
漢方薬の特徴は、複数の生薬による複合効果
漢方薬は、長い経験の中で効果があるとされている生薬(動物性、植物性、鉱物などを利用しやすく加工したもの)を複数組み合わせたものです。
それに対して、西洋医薬は、1つの薬に1つの有効成分で作られていて、1つの症状や病気に対して強い効果が期待できます。感染症、急性期の痛み、熱や血圧を下げることを得意としています。
町の薬局で売られているゲンノショウコ、ドクダミ、センブリなどは、民間薬といいます。これらは、昔から経験的に使われている主に1種類の薬草からなるもので、漢方薬ではありません。
漢方薬は、原則として複数の生薬を決められた分量で組み合わせたものです。漢方医学では用いる条件もきめ細かく決められており、医薬品としても認められています。
一つの漢方薬には、複数の生薬が入っているので、ある時には風邪に効き、お腹にも同時に効くことがあります。つまり、複数の効果があるのです。漢方専門医は、あなたの「証」を診察で特定して、あなたの症状・病気に合った複数の効果を持つ漢方薬を処方します。
現在は、生薬を煎じた液からエキス成分を抽出したエキス製剤を、医療用として使用しています。携帯に便利で服用しやすく、長期保存も可能です。
風邪の初期に有効な葛根湯には、7種類の生薬が入っています。
たとえば葛根湯は、体力がある「実証」の方に向いています。発汗をうながし下熱させる成分、胃の不調を改善する成分、特に肩・首付近の筋肉の硬直をやわらげる成分、炎症を改善する成分、気管支を拡張して咳を鎮める成分、皮膚表面の水分を消去させる成分などが含まれています。
七つの生薬がいっしょに働くことで相乗・相加的に働き、より良い効果を発揮します。ですから、経験学的に多くの人の風邪の初期に効きやすく、自然治癒力を高めます。
葛根湯の成分
- 葛根(カッコン)
- 麻黄(マオウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 甘草(カンゾウ)
- 大棗(タイソウ)
- 生姜(ショウキョウ)
効果のある主な症状・病気
- 初期の風邪
- 頭痛
- 肩こり
- 筋肉痛
- じん麻疹
麻黄湯はインフルエンザに効果があります。4種類の生薬からなります。
たとえば麻黄湯の麻黄は、インフルエンザの初期段階で悪寒があるときに、麻黄はむしろ身体を温め、熱を上げることで免疫を活性化します。間接的な方法ですが、自然治癒力を高めたうえで体温がある程度上がると免疫力は高まり、その結果、体は発汗します。発汗の熱を下げる効果で体温を下げます。さらに、麻黄は気管支を拡張して咳を鎮めます。
桂皮も体を温め、特に麻黄と組み合わさることにより体温を上げる効果は増強され、発汗による解熱をさらに促します。杏仁は痰がらみの咳の鎮静化に役立ちます。甘草は生薬間の調和に役立ち、甘い味で漢方薬全体が服用しやすくなります。
麻黄湯の成分
- 麻黄(マオウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 杏仁(キョウニン)
- 甘草(カンゾウ)
効果のある主な症状・病気
- 風邪
- 初期のインフルエンザ
- アレルギー性鼻炎
- ぜんそく
漢方薬にも副作用はあります
漢方薬は自然由来の生薬を使っているので、「安全で副作用がない」と思われている方が、いらっしゃいます。漢方薬も薬ですので副作用はあります。
たとえば、麻黄は使い過ぎると、汗が多くなったり、不眠や動悸になることもあります。甘草は、血液中のナトリウム濃度が上昇することでカリウムが排泄され、高血圧になることもあります。特に、麻黄の副作用は、体力が低下した「虚証」の人に発生しやすいです。
副作用を防ぐために、患者様の「証」をしっかり特定することや患者様が現在服用している薬(西洋薬を含む)の確認が重要です。ただ、西洋医薬と比べれば、副作用の発生頻度は少なく、程度も軽い場合が多いようです。
西洋医薬と同じ考え方で、きちんと診察を受けたうえで、処方された薬を服用することが大切です。不調やアレルギーなど、おかしいなと思ったら、すぐに医師や薬剤師に相談して下さい。
漢方薬には健康保険が適用されます
現在、日本では148種類の漢方エキス製剤が、健康保険の適用となっています。普通の薬局で買うよりも、健康保険が適用できることで1割から3割の負担になります。上手に利用すれば患者様にとって有益です。