踵骨骨折は、日常生活や仕事中の事故などで、高いところから転落して足から着地した際、かかとに強い衝撃が加わることで起こる骨折です。
踵骨(しょうこつ)とは、「かかと」の骨のことです。踵骨骨折は、足の骨折の中でも比較的頻度が高く、とくに働き盛りの男性に多く見られる外傷です。
かかとの骨は体重を支えるだけでなく、歩く、走る、跳ぶといった動作においてクッションの役割を果たし、アキレス腱の力を足先に伝える重要な働きを担っています。
そのため、踵骨骨折を適切に治療せずに放置したり、初期対応が遅れたりすると、長引く痛みや歩行障害などの後遺症を残しやすく、その後の日常生活や仕事、スポーツ活動に大きな支障をきたす可能性があります。

踵骨骨折の原因:なぜかかとの骨が折れるのか?
踵骨骨折の最大の原因は、かかとに対する強い垂直方向の圧力・衝撃です。骨が硬い地面などに強く打ち付けられることで、潰れるように折れてしまいます。
発症の背景としては、以下のような要因が多く見られます。
- 高所からの転落・飛び降り:
脚立やはしご、屋根、遊具など高いところから誤って転落した際や、飛び降りて着地した際に、体重と落下による衝撃がかかとに集中することで発生する。建築現場などでの労働災害としても見られる。 - スポーツでの着地時の衝撃:
体操競技やパルクール、ボルダリングなどのスポーツで、ジャンプからの着地に失敗した際にも強い外力がかかとにかかり、骨折する。 - 交通事故:
自動車やバイクの衝突事故において、ペダルや車体の床、あるいは地面に足を強く打ち付けた際に生じることがある。

踵骨骨折の症状と進行度:早期発見のためのポイント
踵骨骨折を起こすと、受傷直後から以下のような特徴的で強い症状が現れます。
- 激しい痛みと腫れ:
かかとに激しい痛みが生じ、患部全体が大きく腫れ上がる。 - 歩行困難(体重がかけられない):
痛みのためにかかとを地面につくことができず、自力で立ち上がったり歩行したりすることが極めて困難になる。 - 皮下出血(内出血):
受傷後、足の裏(足底部)やかかとの周囲、足首の周りに広範な皮下出血(青紫色のあざ)が現れることがある。 - かかとの変形(足の幅が広がる):
かかとの骨が押し潰されるように折れる(陥没する)ことが多いため、正常な足と比べてかかとの高さが低くなったり、横幅が広くなったりする変形が見られる。
踵骨骨折の診断と検査:CT検査の重要性
踵骨骨折が疑われる場合、問診で受傷時の状況を詳しく伺い、患部の腫れや変形、皮下出血の有無を確認します。その後、以下のような画像検査を用いて確定診断と治療方針の決定を行います。
X線検査(レントゲン)
全体的な骨折の有無や、かかとの骨のつぶれ具合、変形の程度を確認します。
CT検査
CT検査は、骨折の形状や骨片の位置、関節面の状態を詳しく評価するために非常に重要で、手術の必要性や方法を検討する際にも役立ちます。
また、高所からの転落では背骨(腰椎や胸椎)の圧迫骨折を合併することがあるため、脊椎の検査を同時に行うこともあります。
踵骨骨折の治療:保存的療法と手術療法
踵骨骨折の治療は、骨折部のズレ(転位)の程度や関節面への影響に応じて決定されます。
保存的療法(手術を行わない治療)
関節面のズレがほとんどない亀裂骨折の場合や、患者様の年齢・全身状態により手術が困難な場合に選択されます。ギプスや専用の装具で患部を固定し、松葉杖を使用して骨折した足に体重をかけない(免荷)生活を一定期間送る必要があります。
手術療法
関節面に明らかなズレや段差がある場合や、踵骨の大きな変形を伴う場合には、手術療法を検討します。ただし、手術を行うかどうかは、骨折の状態だけでなく、年齢、全身状態、軟部組織の状態などを考慮して決定されます。
手術では、ずれた骨や陥没した関節面を元の位置に整復し、金属製のプレートやスクリュー(ネジ)を用いて固定します。
関節面のズレを残したまま治癒してしまうと、将来的に「外傷性変形性関節症」を引き起こし、慢性的な痛みの原因となるため、関節面をできるだけ正確に本来の位置へ整復することが手術の大きな目的となります。
踵骨骨折のリハビリテーションと治療後の注意点
踵骨は体重を支える骨であるため、骨折後は十分な期間の免荷が必要となることが多く、治療期間が長期にわたるため、根気強いリハビリテーションが非常に重要です。
手術後、あるいは保存的療法の固定期間中から、足首や足の指の関節が硬くなってしまう拘縮を防ぐために、痛みのない範囲で関節を動かす訓練を開始します。
骨の回復状態を定期的なX線検査で確認しながら、医師の指示のもとで少しずつ患部に体重をかける練習(段階的荷重訓練)を進めていきます。
医師の許可がない状態で体重をかけると、骨折部に過度な負担がかかり、骨癒合や治療経過に悪影響を及ぼす可能性があります。
踵骨骨折は重症度によっては、治療を終えても歩行時にかかとに痛みが残ったり、かかとの幅が広がって以前の靴が履きにくくなったりといった後遺症が残るリスクがあります。これを最小限に防ぐためには、早期に正確な診断を受け、適切な治療と専門的なリハビリテーションを継続することが不可欠です。
かかとに強い衝撃を受けて激しい痛みが出た場合は「ただの打撲だろう」と自己判断して放置せず、速やかに整形外科を受診しましょう。
