近年、部活動に励む中高生やアスリートの間で、故障の原因として「シンスプリント」という言葉をよく耳にするようになりました。
シンスプリントとは、主にすねの内側(脛骨の内側下方)に痛みが生じるスポーツ障害で、正式には「脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)」と呼ばれます。

この障害は、陸上競技、バスケットボール、サッカーなど、ランニングやジャンプを伴うスポーツを行う人に非常に多く見られます。
特に、運動を始めたばかりでトレーニング負荷が急激に高まりやすい中学・高校の新入部員や、シーズン初期、練習量が急増した時期の選手に多く発症するのが特徴です。

すねの内側(脛骨の内側下方)に痛みが生じるスポーツ選手のイラスト

従来、この痛みは骨の表面を覆う骨膜(こつまく)の炎症によるものとされてきましたが、近年では、単なる炎症ではなく、骨に繰り返し負荷がかかることによる「骨ストレス反応(Medial Tibial Stress Syndrome:MTSS)」として理解されます。

下腿の後内側にある後脛骨筋(こうけいこつきん)やヒラメ筋など、足首や足の裏の動きを支える筋肉が、過度な牽引力(引っ張る力)によって脛骨との付着部を繰り返し刺激することで、骨膜に微細な損傷や炎症が生じ、痛みにつながります。

シンスプリントの原因:なぜすねが痛くなるのか?

シンスプリントの最大の原因は、使いすぎ(オーバーユース)です。つまり、運動による繰り返しの負荷が骨と筋肉の付着部に集中することで炎症を引き起こします。

シンスプリント発症の背景としては、主に以下の要因が複雑に関係します。

負荷の要因:運動量・環境

  • 急激な運動量の増加:
    トレーニングの量や頻度、強度を急に上げたとき、筋肉が脛骨を繰り返し引っ張り、骨膜へのストレスが増加する。練習量は段階的に増やすことが重要。
  • 硬い地面でのランニング:
    アスファルトなどの硬い路面での運動は、すねへの衝撃が大きくなる。
  • 不適切なシューズの使用:
    クッション性が低い靴や、足の形に合わないすり減ったシューズの使用は、すねへの衝撃を増やす。
  • 不適切なフォーム:
    衝撃を吸収しきれない、足に負担のかかる走り方も原因となる。

身体的要因

  • 足の形態異常:
    扁平足(へんぺいそく)や回内足(かいないそく)など、足のアーチが崩れている状態は、衝撃吸収力が低下し、すねの内側に負担が集中しやすい。
  • 筋力や柔軟性のアンバランス:
    ふくらはぎの筋肉の柔軟性が不足している場合や、足首を上げる筋肉と下げる筋肉のバランスが悪い場合も発症リスクを高める。

シンスプリントの症状と進行度:早期発見のためのポイント

シンスプリントの痛みは、脛骨の内側縁の、中央から足首に近い部分(下1/3あたり)に鈍い痛みが広範囲に発生するのが特徴です。
患部を押すと強い圧痛が生じます。痛みの範囲が比較的広い帯状であるため、痛みが1か所に限局しないことが多い点で疲労骨折と区別されます。

脛骨の内側縁の、中央から足首に近い部分(下1/3あたり)で鈍い痛みが広範囲に発生する骨と筋肉のイラスト

症状は、その重症度に応じて進行します。

  1. 初期:
    運動開始時に痛みを感じるものの、運動を続けるうちに痛みが軽減または消失する。
  2. 中期:
    運動中はずっと痛みを感じますが、痛みを我慢すれば継続できることも。
  3. 進行期(悪化):
    運動中はもちろん、運動後や安静時にも痛みが続くようになる。最終的には日常生活にも支障をきたし、競技続行が困難になる場合も。

シンスプリントの診断と検査:疲労骨折との区別が重要

診断は問診と触診が中心となります。問診で、痛みの場所、運動量、痛みの経過などを詳しく伺い、触診で、すねの内側下方に広範囲にわたる圧痛があることを確認します。

シンスプリントの症状は、脛骨の疲労骨折と似ているため、鑑別診断が非常に重要です。疲労骨折は、限局的な(狭い範囲の)強い痛みが特徴であり、運動の継続が困難になります。

鑑別や炎症の程度を詳しく確認するため、必要に応じて以下の画像検査を行います。

  • X線検査(レントゲン):
    疲労骨折などの骨の異常を除外するため。
  • MRI検査:
    疲労骨折の早期所見や骨髄浮腫、骨膜反応の有無を評価する。

シンスプリントの治療の基本:安静と保存的療法

シンスプリントの治療の基本は保存的療法です。安静にして原因となった運動負荷を減らすことが重要で、通常は数週間から数カ月で改善が期待できます。

  • 安静・運動の制限:
    痛みのある運動を一時的に中止または制限し、炎症を落ち着かせることが最も重要。痛みが完全に取れてから、段階的に練習を再開する。
  • アイシング・物理療法:
    炎症や痛みを抑えるために、患部の冷却(アイシング)や超音波治療などの物理療法を行う。
  • 薬物療法:
    痛みが強い場合は、炎症や痛みを抑える非ステロイド性抗炎症薬(内服薬や外用薬)を使用することもある。
  • リハビリテーション:
    痛みが軽減したら、再発を防ぐためにふくらはぎの筋肉や足底の柔軟性を改善するストレッチを重点的に行う。さらに、下腿や体幹の筋肉を強化するトレーニングを段階的に進める。
  • インソール(足底板)の使用:
    扁平足や回内足がある場合、足のアライメントを補正し、衝撃を分散させるオーダーメイドのインソール(中敷き)を使用することが非常に有効。

シンスプリントの予防と再発防止:競技を続けるために

シンスプリントは、「単なる筋肉痛」と自己判断して痛みを我慢し、運動を続けると、さらに重篤な疲労骨折などへ進行するリスクがあります。
しかし、オーバーユースが原因であり、早期に適切な休養と治療を行えば多くは改善が期待できます。
また、一度症状が改善しても、再発しやすいのがシンスプリントの特徴です。痛みがなくなった後も、以下の予防策を継続することが重要です。

  • トレーニング量の管理:
    練習量、距離、時間、強度は急に増やさず、週ごとに少しずつ段階的に増やしていく「段階的な負荷の原則」を厳守することが最も重要。
  • 適切な靴の選択と使用:
    クッション性・安定性に優れ、足の形にフィットしたシューズを選びましょう。扁平足などがある場合はインソールで足のアーチを補正することも有効。
  • 柔軟性の維持:
    運動前後のウォーミングアップとクールダウンを徹底し、ふくらはぎや足底のストレッチを十分に行い、筋肉の柔軟性を保ちましょう。
  • 筋力のバランス調整:
    下腿の筋力バランスを整えるトレーニング、下肢への負担を減らすために体幹(コア)や股関節周囲の安定性を高めるトレーニングなどを継続的に行いましょう。