アキレス腱とは、踵骨腱(しょうこつけん)のこと。ふくらはぎの腓腹筋・ヒラメ筋をかかとの骨に付着させる足首の後面にある腱です。
歩行や運動でのダッシュ・ジャンプなどで重要な役割をする人体で最も強く太い腱です。
アキレス腱断裂は、このアキレス腱が切れた状態のことです。
ギリシャ神話でアキレス腱を弓で射抜かれて落命するのは英雄アキレウスですが、実世界では、30~50才の中高年がスポーツ中に断裂することが多い疾患です。
アキレス腱断裂の症状
アキレス腱が断裂した瞬間、「バチッ」「ブチッ」と破裂したような音や「後ろから蹴られたような」「バットで叩かれたような」衝撃を感じたとおっしゃる患者様が多くいます。
受傷直後は、アキレス腱断裂した足では体重を支えることができないため、転倒したり座り込んだりします。
症状の程度によっては受傷直後でも比較的痛みが軽いため、歩けたり足関節を動かすことができる方もいますが、アキレス腱が断裂した足ではつま先立ちができなくなります。
中高年のスポーツ愛好者がアキレス腱断裂しやすい理由
アキレス腱断裂は10代後半から高齢者までおこる可能性がありますが、とくに断裂しやすいのは30~50才くらいの中高年スポーツ愛好者です。
中高年スポーツ愛好者に患者様が多い理由は、老化でアキレス腱が弱くなっているためと考えられます。
腱が弱くなっている中高年の方が、スポーツ中のダッシュやジャンプなどの動作でふくらはぎの筋肉がギュッと収縮した時や着地で筋肉が無理に伸ばされた時に、アキレス腱が断裂するリスクがあります。
アキレス腱断裂の診断・検査
問診では、受傷したスポーツおよび動作、受傷時の状況、断裂後どこがどのくらい痛むかなどを詳しく患者様から伺います。
アキレス腱が断裂している部分はへこんでいて押すと痛みが出ます。
トンプソンテストもアキレス腱断裂の検査の1つです。
うつ伏せで膝を90度曲げた状態でふくらはぎを強く握った時に、足首より下が動かなければアキレス腱断裂の可能性があります。
エコー(超音波検査)でアキレス腱断裂の程度を確認します。骨折の可能性を排除するためにX線で検査することもあります。
アキレス腱断裂の治療は保存的療法か手術療法を選択
アキレス腱断裂の治療には、アキレスブーツなどの固定装具を使った保存的療法と断裂した腱を直接縫合する手術療法があります。
断裂の程度、患者様の年齢や生活スタイルなどに応じて治療法を選択する必要があります。
保存的療法は体へのダメージが少なく、事情により入院ができない方でも通院治療が可能です。
一方、再断裂の可能性が高い、筋力や関節可動域の機能回復が遅くなるという報告もあります。また、アキレスブーツなどの装具で長期間固定する必要があります。
手術療法は、断裂したアキレス腱を手術用の糸で縫合することで確実に修復できます。保存的療法に比べて、術後の装具による固定期間も短いため早期にリハビリを開始できること、再断裂リスクが低いことがメリットです。
一方、入院が必要となり、手術することによっての合併症のリスクもあります。
アキレス腱断裂からスポーツ復帰できるまで
保存的療法あるいは手術療法どちらでも、リハビリを早期に開始することは機能回復に有効です。
最初の3ヶ月は再断裂の可能性が高いため、アキレス腱に過度な負荷がかからないように注意してリハビリを進めていきます。
個人差はありますが、治療開始後、軽い運動が可能になるのは4ヵ月程です。断裂した方の足首の動きが健側と同じレベルになりスポーツ復帰できるまでには、6ヵ月以上はかかります。
イラスト出典:日本整形外科スポーツ医学会HP「スポーツ損傷シリーズ 9. アキレス腱断裂」
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