肺炎は日本人の死因の第3位です。年齢が高くなるとともに、肺炎が死因となる割合が高くなり、肺炎で亡くなる方の約95%は65才以上の高齢者です。つまり、高齢者にとって肺炎は、死にさえ至る非常に危険な病気です。

肺炎とは

肺炎とは、菌・細菌・ウィルスなどの病原菌や薬物・アレルギー反応・特別な免疫反応などにより、肺の中にある肺胞に炎症が起こる病気です。とくに抵抗力の落ちた高齢者や子供がなりやすい病気です。

肺炎の典型的な症状

咳をする老人のイラスト肺炎の典型的な症状として、咳(せき)、痰(たん)、発熱、息苦しさ、胸痛(息を吸ったときに胸が痛い)、体がだるい、食欲低下などがあります。

肺炎の問診と検査

患者様の症状をお尋ねしたのち、普段の呼吸音とはちがう痰が詰まったような音や気道の空気の通りが悪くなったような呼吸音が聞こえるかどうかを聴診します。肺炎を疑えば、以下の検査を病態に応じて行ないます。

  • 血液検査:白血球数、白血球の種類分類別の増減(炎症の特徴の評価)、CRP(炎症反応を見る数値)、血沈(炎症反応を見る数値)
  • 喀痰(かくたん)検査:病原菌感染の疑いがある場合、患者様の痰を採取培養し、感染の原因菌を特定する。
  • 胸部のレントゲン撮影:肺炎の有無、炎症の位置、陰影の特徴、広がりを調べる。
  • 胸部CT:さらに微細なところまで調べる必要がある場合。
  • 体温、脈拍数、血圧、指に装着する酸素飽和濃度測定などにて重症度を評価する。

肺炎の基本的な治療法

肺炎の基本的な治療法は大きく2つあります。検査で肺炎の原因を特定したうえで、その原因に有効な抗生物質の投与で病原菌を倒す方法と咳や痰、発熱、倦怠感の症状を軽くするための症状に合わせた薬の投与によって、体力および抵抗力・免疫力を取り戻しながら、病状を緩和させる方法です。この2つの治療法を組み合わせます。

高齢者の肺炎について

高齢者にとって肺炎は、非常に危険な病気です。その理由は、抵抗力・免疫力が低下している高齢者は、肺炎になりやすく、症状も急激に悪化することがあるからです。また、高齢者は典型的な肺炎の症状が出にくいことで、発見が遅れることも理由の一つです。

高齢者の肺炎の多くの原因は、風邪やインフルエンザなどの病気から二次的に引き起こす細菌性肺炎と唾、痰、胃液や食物残渣(食べ物のかす)が、気管から肺に入って炎症を起こす誤嚥性肺炎です。

高齢者がなりやすい肺炎 細菌性肺炎とは

細菌性肺炎の原因の病原菌には、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌(インフルエンザウィルスとは別)やブドウ球菌などがあります。体力や抵抗力・免疫力が落ちた状態で二次的に細菌感染を起こし肺炎に至ることが、高齢者の細菌性肺炎の多くの原因です。

たとえば、肺炎球菌は鼻や喉の奥につきやすい細菌ですが、健康で体力のある方は抵抗力・免疫力が十分にあるため、菌が繁殖することが少なく肺炎を発症することは稀です。
一方、高齢者の多くは、風邪やインフルエンザなどの病気により体調を崩すと、体力や抵抗力・免疫力が落ちます。その結果、肺炎球菌などの細菌が、細気管支や肺胞まで侵入して肺周辺に炎症が起こります。これが、高齢者が細菌性肺炎になりやすい理由です。

高齢者がなりやすい肺炎 誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎で、肺に食事が入ってしまう老人のイラスト高齢者がなりやすい肺炎のもう一つに、誤嚥性肺炎があります。誤嚥とは唾液や食物などが気管に入ってしまうことです。その唾液や食物に含まれた細菌が、気管から肺に入り炎症を起こすことを誤嚥性肺炎といいます。

高齢者が誤嚥する原因は、病気や老化による嚥下(えんげ)機能の低下と考えられています。嚥下とは口の中の唾液や食物を胃まで飲み下す過程のことです。

高齢者は、病気や老化により嚥下機能が低下することで、食事中だけでなく、寝ているときも口腔内の唾液や食物残渣が気管に入ることがあります。
食道にうまく食物を送り込む機能や気道に入りそうな唾液や痰、食物残渣を咳をして吐き出す力が低下していることで、口の中に出せず誤って気管から肺の中まで入り炎症を起こすのです。これが、高齢者が誤嚥性肺炎になる最も多いケースです。

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高齢者の誤嚥性肺炎について

高齢者の肺炎で特徴的な症状

  • 咳や発熱が目立たないことがある。痰も出にくいことがある。
  • 食欲不振、全身のだるさ、意識障害が前面に出ることがある。
  • 脱水症状が見られることがある。
  • 持病や他の病気の症状と肺炎の症状との区別が難しい。

若い方と比べ高齢者の場合、咳、痰、発熱などの肺炎の典型的な症状が目立たない傾向があるため、発見が遅れ重症化するケースが多くあります。

また、発見が遅れるもう一つの要因は、高齢者は複数の持病があることが多く、その持病の症状と肺炎の症状の区別をしにくいことです。たとえば、いつも咳き込んでいる高齢者の咳は、肺炎によるものなのか判断が難しいことが挙げられます。

高齢者の肺炎治療は早期発見・早期治療が第一です

ポイントを説明する医師のイラスト高齢者の肺炎は典型的な症状が出にくいために、気づかないうちに肺炎になって重症化するケースが多くあります。
ご家族や周りの方がよく注意して高齢者を観察することが大切です。食欲が急に落ちた、異常にむせる、元気がないなどいつもと違う状況があれば、なるべく早く病院で適切な診断と治療を受けてください。高齢者の肺炎治療は早期発見・早期治療が第一です。

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高齢者の肺炎予防に大切な3つのこと