高齢化が大きな問題となっている現在の日本では、サルコペニアという高齢者で起きる老化現象が注目されています。

サルコペニアとは「高齢になるにつれ、体の筋肉量が減少していく」現象の1つ。 身体の筋肉量の低下が進むと筋力の低下も同時進行していくことになり、転倒や骨折、病気の原因になる危険性が高まります。
そのため高齢者は、日々の生活の中に運動を取り入れてサルコペニアを予防していく必要があります。

今回のリハビリ部作成記事では、サルコペニア予防改善のためのレジスタンス運動と有酸素運動を紹介します。

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サルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドロームの違いについて

近年テレビなどで挙げられるサルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドローム。この3つは状態としては似ていますが、言葉の意味としてきちんと区分されています。

まず、サルコペニアは前述の通り「高齢になるにつれ、身体の筋肉量が減少していく」老化現象です。
それに加え、握力や体幹筋など全身の「筋力の低下」、歩行速度の低下などの「身体機能の低下」が起こることを指します。

次にフレイルとは、英語のFrailtyから来ており、「虚弱、衰弱、老衰、脆弱」という意味があります。
しかし、日本老年医学会は「しかるべき介入により再び健康な状態に戻ることが可能」と発表しており、議論の末現在フレイルと呼ばれています。つまり要介護になる恐れもあり健康な状態に戻れる可能性もある中間の状態がフレイルです。

最後にロコモティブシンドロームとはLocomotiveからきており和訳で「運動」「移動」という意味があります。
運動や移動の基本的な動作である「立つ」「歩く」この2つが機能低下している状態がロコモティブシンドロームと呼ばれています。

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サルコペニア予防・改善のための運動を紹介します

サルコペニアは筋肉量が低下していく老化現象です。予防・改善として「筋肉量を落とさない」、「筋肉量を増やす」ことが大切です。
筋肉量を増やすためには運動と栄養を考えながらやらないと逆効果にもなります。

今回のリハビリ部作成記事ではサルコペニア予防改善のための運動を紹介します。
サルコペニアの原因である筋肉量を「落とさない」、「筋肉量を増やす」には、筋力や身体能力を改善するための年齢、体力や体調に応じた運動・トレーニングが必要です。

とくに、目的の骨格筋に負荷をかけるレジスタンス運動とウォーキングや水泳などの低強度の有酸素運動を組み合わせれば、サルコペニアの予防や改善に効果的とされています。

サルコペニア予防・改善のためのレジスタンス運動とは?

筋肉に負荷をかける動きを繰り返す運動のことを指します。
レジスタンス運動は筋肉量の増加に期待でき、自分の体重でも負荷となるため高強度トレーニングが適さない高齢者にも体力や体調にあった低強度トレーニングを選択できます。

ハンドニー

四つ這いになり背中が曲がらないように、片方の手足を伸ばしていきましょう。

ハンドニー1 ハンドニー2

難しい人は四つ這いの状態で腕や片足を伸ばすだけでも効果が期待できます。

ハンドニー3

タオルを使った運動

両手でタオルを持ち、肩幅より少し広げた状態で腕を挙げます。
タオルを引っ張り、肘を曲げ腕を下ろしていきます。10回を目標にしましょう。

タオルを使った運動1
タオルを使った運動2

片足立ち訓練

姿勢をまっすぐにして、床に足が付かない程度に片足を挙げます。

片足立ち訓練1
片足立ち訓練2

膝伸ばし運動

高めの椅子に浅く座り、椅子の縁に手をかけます。
片方の足首を直角に曲げて、膝をまっすぐに伸ばします。
そのまま足を約10cm上にあげ、5~10秒間その姿勢を維持します。

膝伸ばし運動1
膝伸ばし運動2

サルコペニア予防・改善のために自宅でできる有酸素運動

前述の通り本来ならばレジスタンス運動と有酸素運動を組み合わせることでサルコペニアに対して高い予防効果が期待できます。

しかし、日々の生活の中でレジスタンス運動や2つを組み合わせた運動を行うのは時間が無い方や体力に自信が無い方には厳しい事が予想されます。
よってレジスタンス運動や2つを組み合わせた運動を行うよりは劣りますが、有酸素運動だけでも行うことによりサルコペニアやフレイルへの予防効果として期待できます。

足の筋肉を主に使用する運動、かつリズミカルに反復できる運動が有酸素運動になります。
ウォーキングやサイクリング、ダンスなどを週に3日~5日程度、1日30分~60分くらい、軽く息がはずむくらいの強度で継続的に行い、サルコペニアの予防を行っていきましょう。