腰痛が発症した女性 腰痛の悩みを抱えている方は、たくさんいらっしゃることでしょう。整形外科の患者様の初診時の訴えで最も多い症状です。

腰痛とは病名ではなく、いろいろな原因で起こる腰の痛みの総称です。
原因がはっきり分かっているものと、十分には分かっていないものがあります。

原因がはっきり分かっているものには、脊椎、神経、内臓、血管、心理的な要因などによる腰痛があります。しかし、ほとんどの場合、原因を特定することが難しい腰痛が多いの実態です。

本記事では、原因を特定することが難しい腰痛に対して、城内病院整形外科がどのように診断・検査を行うかを詳しく紹介します。

腰痛の診断 ~痛みが腰部のみの場合~

腰痛は原因が特定できないものが80%以上あるといわれています。これを非特異的腰痛と呼びます。この非特異的腰痛は、症状が腰部のみに現れる「いわゆるただの腰痛」の可能性が高いものです。
ぎっくり腰(腰椎捻挫)や変形性腰椎症が含まれます。

これに対して、診察や検査で原因が特定できる腰痛を特異的腰痛と呼びます。
腫瘍、炎症(化膿性脊椎炎)、外傷などがあります。これらは見逃してはならない疾患です。

見逃してはならない疾患は「Red flag sign」でチェックします

腰痛患者を診断する時、急性・慢性とも、「重大な脊椎病変の可能性があるかどうか」を日本整形外科学会の腰痛診療ガイドライン2012の「Red flag sign」を使ってチェックします。

重大な脊椎病変とは、悪性腫瘍、脊椎感染症、骨折、解離性大動脈瘤、強直性脊椎炎、馬尾症候群などです。
これらは重大な病気で、そのひとつの症状として腰痛が現れます。患者数としては全腰痛の5%以内と少数ですが、生じた場合は危険な病気です。
この「Red flag sign」のチェックリストに当てはまる症状がある方は、すぐに整形外科の診断を受けて下さい。

腰痛のRed flag sign(腰痛診療ガイドライン2012より簡略化)

  • 発症年齢が20歳以下、または55歳以上。
  • 時間や活動によって、良くなったり悪くなったりしない。
  • 胸が痛い。
  • 癌がある。
  • ステロイドを使った治療をしたことがある。
  • HIVに感染している。
  • 栄養状態が悪い。(「病気のせいで長期間にわたり食事が不十分な高齢者」「お酒しか口に入れてないアルコール中毒患者」といった極端なケースを想定したものです。)
  • 予期せぬ体重減少。(定義的には「6~12か月の間で5%の減少」とされますが、いわゆる、「病的な痩せ方」だと考えて下さい。)
  • 広範な神経症状:急に足に力が入らなくなった、尿が出なくなったなど。
  • 背骨の変形。(曲がったりなど)
  • 発熱。

「Red flag sign」のチェックリストに該当した患者様には、画像検査(X線、CT、MRI)や血液検査を行い、重大な脊椎病変がないかどうかを調べます。

腰痛の診断 ~下肢にも痛みやしびれがある場合~

痛みが腰部のみで「Red flag sign」で重大な脊椎病変がないことを確認したら、つぎは、下肢(股関節から先の脚部)に痛みやしびれがあるかを調べます。

下肢症状の代表的なものは、痛みとしびれ(知覚鈍麻、じんじん感など)です。
痛みは坐骨神経痛や大腿神経痛などがあります。臀部痛を訴える患者様もいらっしゃいます。
また、下肢症状の出現のポイントとして、安静時にも痛みが出る場合と安静時には症状がないが立位や歩行により痛みが出る場合があります。

下肢に痛みやしびれがある場合には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の可能性があります。椎間板ヘルニアは腰や臀部が痛み、下肢にしびれや痛みをおぼえ足に力が入りにくくなります。

脊柱管狭窄症は、腰痛はあまり強くなく安静にしている時にはほとんど症状はありません。しかし、背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなります。

椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の治療法は、保存的療法と手術です。
痛みが強いときには安静を心がけ、コルセットを付けたりします。神経ブロック(神経の周りに痛みや炎症を抑える薬を注射する)を行い、痛みが緩和されればリハビリを行います。
保存的療法を行っても痛みがとれず、日常生活に支障が出てくる場合には手術を行うこともあります。
近年、内視鏡を使った低侵襲(体へのダメージが少ない)手術も普及しています。

下肢症状の診察のポイント

  • 知覚障害:知覚鈍麻や過敏。「歩行時に下肢全体がしびれる」「足が棒のよ うになって感覚がなくなる」「足がしびれて前に出なくなり、転びそうになる」など。
  • 運動障害:下肢の筋力が低下しているか。
  • 深部腱反射:蓋腱反射やアキレス腱反射を試します。
  • 膀胱直腸障害:尿閉、尿失禁、便秘などの症状があるか。

下肢症状がある場合の検査

  • 単純X線
  • CT:腰部脊柱管狭窄症では、姿勢により脊柱管狭窄が増悪するため、その程度を評価するために行います。
  • MRI:下肢症状がある場合。腰部の痛みだけであっても慢性的や激烈な痛みをある場合。「Red flag sign」を見逃さないために撮影。
  • 神経ブロック:注射をすることで患部が特定できます。治療と診断を兼ねて行います。

下肢症状があるときに、日常で気をつけること

腰痛が発症した女性 以下の行為は、症状をより悪化させることがあります。気をつけてください。

  • 重いものを持ち上げる。
  • 悪い姿勢での動作や作業。 
  • 喫煙が原因になることもある。

痛みが腰部のみで非特異的腰痛の場合の治療

「Red flag sign」のチェックリストに当てはまらず、下肢症状もない場合は、非特異的腰痛です。

非特異的腰痛の場合、保存的治療を行います。まずは、痛みが強いときは、安静を基本とし投薬を行います。痛みが軽減すれば、リハビリで腰痛体操や水中歩行などを、肥満症にはダイエットを指導します。
非特異的腰痛は、適切な初期治療を行えば多くは短期間で治ります。しかし、一度発症すると、再発と軽快を繰り返すことが特徴です。

痛みが長引く場合や痛み止めを飲んでも症状が改善されない場合は、再検査の対象になります。
痛み止めに反応しない腰痛には、危険な病気が隠れている可能性もあります。4~6週間続く場合には、もう一度、「Red flag sign」を使って評価をして血液検査や画像検査などを行います。

また、最近では、職場などの対人ストレスに代表される心理的要因で、腰痛が起こる場合が注目されています。
心理的なストレスを抱えたまま持ち上げ動作などをすると、姿勢バランスが微妙に崩れて椎間板への負担が増し、腰痛を起こすリスクを高めます。
自分に合った方法で、腰痛につながる心理的なストレスを解消しましょう。

腰痛は症状によっては、重大な病気やけがが隠れている場合があります。自分で「ただの腰痛」と決めつけず、一度、整形外科で診断を受けましょう。